ANAの企業分析

今回はANAの企業分析です。ANAはJALと並ぶ日本を代表する航空会社で、常に就職ランキングでも上位に入り、とても人気の高い企業です。ただ、直近はコロナの影響をモロに受けている企業としても知られ、収益は大きく落ち込んでいます。コロナ前とコロナ後では、ANAを取巻く環境は大きく変化すると考えられ、今後ANAのビジネスがどうなるかを考えてみたいと思います。

ANAの業績

まずANAのコロナ禍での業績を見てみたいと思います。去年(2020年3月度)の業績を見ると約2兆円近い売上と270億円の利益を上げています。コロナが広まったのは国内では2月頃で、実際にビジネスへの影響が大きくなったのは3月からだと思うので多少はビジネスへの影響はあるとは思いますが、概ね例年通りの売り上げの規模になっていると思います。

2021年3月度(予想)2020年3月度(単位:億)
売上高7,40019,742
営業損益▲5050608
利益▲5100276

それに対して最近発表された2021年3月度の業績予想を見てみると売上は7400億円で、利益は5100億円の損益とされています。昨年までの好景気の中で上げている利益が300億円弱の中で、1年で5100億円の損失を計上するわけですからコロナの影響は大変大きいことが分かります。1年の損失を埋めるために今までの利益水準だと単純計算で10年かかるわけなので、大変厳しい状況であることが伺えますし、また2022年度以降もコロナの影響がゼロとなり、コロナ前と同じぐらい人が飛行機を使って移動するのかどうか不確定な要素も多く、将来的にも厳しい経営が続くと考えられます。

航空業界の将来を考えてみる

コロナ後の航空業界でポイントとなる重要な要素は下記の2つかと思います。

  • コロナ後の移動に対する需要の増減
  • 移動以外の収益の柱の確立

まず一つ目ですが、コロナ後の世界では例えコロナが収束したとしても以前のような航空需要は見込めないのではないかと考えられます。特にビジネスではテレワークが普及しましたので、今まではグローバル企業などで多くの社員を本国に呼び寄せて行うイベントなどは今年はオンラインやバーチャルで行われています。コロナ後に以前のように実際に集まって同じようなイベントなどを行うことは減ると考えられます。ビジネスの主張についても同様です。今まではその国に訪問して対面で商談していた場合も今年はオンラインで実施されています。コロナが収束するとある程度は航空需要は戻ると思いますが、コロナ前と同じ水準までは戻らないのではないでしょうか。実際に対面で会って話すことはメリットも大きいですが、プライベート面では家族と過ごす時間が減ったり、単純に移動時間や移動に伴う体力の消耗などデメリットもあるので、不要な出張は減ると思います。

対して個人の旅行の需要はコロナが収束するとある程度は元に戻ると思います。人の新しい土地や文化にふれたい、刺激を受けたいという欲求は普遍だと思うからです。ただし、こちらは景気の影響を大きく受けるでしょうから、コロナ不況が今後深刻になっていくと予想される現状では、コロナ以前の需要に戻るまでは1、2年ではすまないと思います。なのでコロナ後の航空需要についてはビジネス・旅行の両方でしばらく(3、4年)は以前の水準には戻らないと私は思います。

輸送以外の事業の確立

ANAは旅客輸送以外にも実はホテル事業やポイント事業(マイレージ)やECなど様々なビジネスを手掛けています。ただし、いずれも航空事業に付随・補完するサービスのような位置付けで、ANAを支える事業としては航空ビジネス一本で今までやってきたと思います。これを航空事業と並ぶ大きな柱に育てることができるかが今後のANAを左右する大きなポイントになりそうです。最近発表になったANAペイの事業発表もそのような背景があってのことだと考えられます。特にANAのマイレージは多くの人が一生懸命溜めていることもあって保有する個人の購買データも多くあると思うのでこれをどれだけ生かせるかがポイントになりそうです。うまく活用できると大きな事業に育つ期待もある反面、決済事業はすでに多くの事業者が入り乱れるとても競争の激しい市場です。ITの専門家でもないANAがどれだけ先行するIT企業(ペイペイ・Lineペイ・ペルペイ)などと競争できるのか、少し疑問でもありますが勝負する以外に生き残る道がないのかもしれません。

ANAで募集している職種

ANAでは様々な職種を募集しています。パイロット、客室乗務員(CA)、航空整備士、事務職、グランドスタッフなどです。高給で知られるパイロットですが、厳しい採用条件とともに育成に長い年数もかかるようです。ただ機長ともなると一回のフライトで搭乗する何百人の命を預かるとてもやりがいのある仕事で今も昔も大人気の職種です。

客室乗務員も昔から特に女性に人気のある職種で、国際線に搭乗することになれば世界各国に行くことになります。様々な文化にふれることができる刺激ある仕事だと思います。客室乗務員になるための就職塾のような学校もあるようです。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょう。

グランドスタッフは空港で旅客の対応をするお仕事で、旅行の際にはお世話になりますね。整備士は飛行機が事故なく就航できるようにメンテナンスをするのが仕事で、機械が好きな男性が多い印象があります。事務職は企画・調達のようなビジネス面を担当する仕事ですね。ビジネスに興味がある、飛行機が好きな人がされているお仕事だと思います。

ANAの2022年度の新卒採用

冒頭にANAのビジネスがコロナの影響で非常に厳しい状況になると説明しましたが、どうやら2022年度の新卒採用にもそれは影響するようです。11/17にANAの2022年度採用についてのニュースが発表されました。それによると2022年度はパイロットなどの一部の職種を除いて採用を見送るようです。かなり厳しい状況ですが、2021年度もグループ全体で3200人の採用を計画していたものが、最終的には600人の採用で終わったようですので、その流れを継続するということのようです。客室乗務員は人気の職種で小さい頃から夢見ていた人もいると思うので可哀想ですが、現状の雇用を守ためには致し方ない、苦渋の決断だったのかもしれません。

ただコロナの影響は今後まだしばらく続くことが予想されます。来年度も今年と同様の赤字を計上するとなると、もはや会社が存在できるかどうかのレベルの危機です。例え入社できたとしても待遇面含めて非常に厳しくなると思うので、中長期的なキャリアを考えて、コロナ禍でも業績を大きく伸ばしている企業もありますのでそのような業界への就職を検討する必要もあるのではないかと思います。長年、航空業界で働くことを夢見ていた人は大変つらいと思いますが、このような状況でもなんとかボジティブに考えていくしかないかなと思いますが、つらいですね。

ANAの企業分析

ANAには様々な職種があるので一概にスコアをつけるのは難しいのですが、キャリア充実度としては7ポイントにしました。パイロットや客室乗務員、整備士などかなり専門的で長年をかけてスキルを磨いていける魅力的な職種だと思います。ただ航空業界はせまい業界であるため、他社に移ってキャリアアップという選択肢が限られてくると考えました。ANAで自分の職種を極めるという人にはとても魅力的な選択肢だと思います。

ワークライフバランス

ワークライフバランスは低いポイントになりました。事務職以外の職種はカレンダー通りの休日ではなくフライトなどのシフトに合わせての勤務体系になるので、ワークライフバランスという点では難しい部分もあるかもしれません。国際線では夜間フライトもありますので、実は体力的にも厳しいこともあるかもしれません。また客室乗務員は女性が多いこともあり、会社として産休・育休などの制度は充実しているようですが、実際に子育てしながらフライトをこなすのは難しいようで退職される方もいるようです。コロナで普及しつつあるリモートワークができるお仕事でもないので、ワークライフバランスという点では充実しているとはいえなさそうです。

待遇充実度

高給で知られるパイロットは文句なしで、すべての業界・職種の中でもトップクラスであると思います。サラリーマンとしてはずば抜けてます。客室乗務員などの待遇は以前よりは下がっているようです。コロナで今後2、3年はさらに厳しくなることが予想されるのでポイントも低くなっています。

忙しさ

入社難易度

こちらも職種で大きく変わると思います。パイロットは人気職種かつ採用人数も業界全体でも多くはないため倍率が高いです。客室乗務員も人気職種であるので就職難易度は高いと思います。

業界安定度

コロナの影響で本当に不透明な状況です。まずは今度、1、2年は会社の存続をかけてどれくらい業績を回復できるかにかかっていると思います。ただ、コロナ前の水準に航空機での移動の需要が戻るのかはわからないですが、確実にほかの国いったりする需要は将来もなくなることはありませんので、航空ビジネス自体がなくなることはありませんが、海外ではコロナの影響で倒産している企業もあり、業界を通しての再編成もありえます。その中でANAがどうなるのか、別の企業と吸収・統合されるのか、それとも息を吹き返し別会社を買収・統合し規模を拡大するのか、まったく分かりません。10年後の業界地図がどうなっているか興味ありますが、現時点では不明瞭なことが多くこのようなポイントになっています。